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野生のメダカは寄生虫だらけ?イカリムシの治療方法と生態

みなさん寄生虫と聞くとどのようなイメージを浮かべますか?

先日、野生で捕まえたメダカに寄生虫がついていました!

普通なら寄生虫を取って殺して、終わり。となりますが、せっかくなので生態についても紹介したいと思います。

今回、イカリムシの治療にはリフィッシュを使い、簡単に駆除できました。

処理して以降、イカリムシは出ていません。

うんこだと思ったら寄生虫だった

うちには水槽があり、エビを飼っています。

しかし、エビだけでは寂しいのでそろそろメダカでも入れたいな〜と思い、とある川から採ってきました。

そしたら、なんか切れの悪いウンコが付いてるな〜と思ってたんですよね。
ですが、そのウンコは数日経っても取れないわけです。

そこで僕は気がつきました。
これ、ウンコじゃなくね…?と。

よく観察してみると、そいつの先端は二股に分かれています。
他の子に付いてるやつもよく見ると二股に分かれてます。

調べてみるとイカリムシという寄生虫であることがわかりました。

イカリムシってどんな生き物?

イカリムシは船を海上で安定させるための錨のような形をしていることから、その名が付けられたようです。

こんな形をしていますが甲殻類で、カイアシ類というミジンコとかの仲間らしいです。

イカリムシは魚にぶら下がりながら栄養を吸い、この二股部分に入っている卵を撒き散らします。

このイカリムシと宿主魚の関係ですが、イカリムシにのみ一方的にメリットがあるため、寄生関係にある(寄生)と言います。

このイカリムシは放っておくと5000個もの卵を産むらしいですが、気づいたのは水槽に入れて数日経ってから…

気づいた時には手遅れでした。

イカリムシにはリフィッシュという薬が効くようなので、早速購入しました。

イカリムシの成体にはリフィッシュは効かないようなので、使う前にイカリムシはピンセットで引き抜きました。
メダカを網で捕まえ、指で抑えながらイカリムシの根元の方から一気に引き抜く要領です。

イカリムシがエラに付いているメダカは、残念ながら死んでしまいました…

リフィッシュの説明書に則って使用しましたが、ここで事件が。

イカリムシは甲殻類なので、リフィッシュはエビにも効いてしまいます。
そのため、エビは隔離していたのですが、隔離したときに蓋をしっかり閉めておらず、ほとんどのエビが干しエビになりました…涙

そんな干しエビ事件はありましたが、リフィッシュの使用終了から2ヶ月ほど経ち、イカリムシの姿は見えません。

また、リフィッシュの説明書には水草に使用しないよう書いてありましたが、気にせず使いました。
水槽にはウィローモスとオオカナダモがいましたが、元気に育っています。

イカリムシの生態から考える防ぎ方

今回のようにエビが入っている水槽にイカリムシが混入してしまった場合、エビはどうすれば良いのでしょうか。
リフィッシュを使うとイカリムシを殺せますが、エビも一緒に殺してしまいます。

上でも述べたとおり、イカリムシは寄生生物なので生きた魚が必要です。

つまり、同じ水槽の中に魚がいない状況にすれば、自然といなくなると考えられますね。

イカリムシは卵から数日で孵化した後、ノープリウス→メタノープリウス→第一コペポディド幼生と数日で変化します。
第一コペポティド幼生の時期から宿主を必要とし、魚の表面上にいて宿主魚から栄養を吸い取って生きます。

ですので、魚がいない環境を1週間以上保てば、理論上イカリムシは死ぬと予想できます。

エビを隔離した水槽にはリフィッシュを使えないため、元の水槽のリフィッシュの効果が切れるまで放置し、水も一緒にメダカの水槽に戻しました。

それから2ヶ月ほど経ちますがイカリムシの姿は見えません。

イカリムシの雌の寿命は約2ヶ月とのことなので、仮にイカリムシが生きていれば姿が見えると思います。
そのため、イカリムシ の根絶に成功したのでしょう。

イカリムシは人にとっては邪魔者だけど、自然の一部である

イカリムシが含まれるカイアシ類は自由生活性のものと外内部寄生性のものがおり、イカリムシは外内部寄生性に分類されます。*以降は大塚ら(2018)より引用します。

自由生活性のカイアシ類はその名の通り、自由に移動することから自ら餌を取りに行くことができます。

しかし、イカリムシを含む外内部寄生性のカイアシ類は宿主に栄養を依存するため、イカリムシなら魚がいなければ生活環を完了することができません。

なぜ、自分の生活環を別の生き物に依存するようになったのでしょうか。

自分で移動して餌を取れないというデメリットはありますが、何かしらのメリットがあって寄生しているはずです。

面白いことに、イカリムシは魚に寄生することで生きていますが、そのイカリムシの表面にも細菌や藻類がいるようです。

これらを表在性生物と呼びますが、イカリムシが魚を、表在性生物がイカリムシを利用することで、
(1)移動性があるため貧酸素水塊などの不適当な環境を避けることができる
(2)ある種の宿主ではその大規模回遊によって分布を拡散できる

といったメリットがあるだろうと、大塚ら(2018)で述べられています。

生物の進化を考えると、魚が登場した後に魚を利用できるイカリムシが登場したのではないかと思われます。

食物連鎖の中では動物プランクトンは魚に食べられる側ですが、動物プランクトンが魚を利用する構図は生物の多様性や戦略を感じられ、興味深いですね。

終わりに

今回は野生のメダカについていた寄生虫、イカリムシの対処方法やその生態について紹介しました。

皆さんも身の回りの生き物で「気持ち悪い」とか「嫌い」と思っても、その生態について調べてくると面白いことが分かるかもしれませんよ。

今回はこちらの文献から引用しました。
・大塚 攻*・宮川千裕・平野勝士・近藤裕介(2018)魚類の寄生性カイアシ類の表在性ぶつ:ユニークな付着基盤 タクサ 45:48~60 https://www.jstage.jst.go.jp/article/taxa/45/0/45_48/_pdf

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