植物が虫の咀嚼音を聞いたら身構えるってほんと?

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生き物関係

こんにちは。

先日面白そうな論文を見つけました。

タイトルは植物は昆虫の咀嚼音で生じる振動により身構えるPlants respond to leaf vibrations caused by insect herbivore chewing)。

なにそれ!?

普段植物と菌の研究をしているので、その勉強をすることはありますが、昆虫の勉強をすることはありません。

それでは、今回は簡単に説明していきましょう!

タイトル

Plants respond to leaf vibrations caused by insect herbivore chewing. 
植物は昆虫の咀嚼音で生じる振動により身構える。
著者 H. M. AppelR. B. Cocroft
公開日  02 July 2014
雑誌 Oecologia

概要

Plant germination and growth can be influenced by sound, but the ecological significance of these responses is unclear. We asked whether acoustic energy generated by the feeding of insect herbivores was detected by plants. We report that the vibrations caused by insect feeding can
elicit chemical defenses. Arabidopsis thaliana (L.) rosettes pre-treated with the vibrations caused by caterpillar feeding had higher levels of glucosinolate and anthocyanin defenses when subsequently fed upon by Pieris rapae (L.) caterpillars than did untreated plants. The plants also discriminated between the vibrations caused by chewing and those caused by wind or insect song. Plants thus respond to herbivore-generated vibrations in a selective and ecologically meaningful way. A vibration signaling pathway would complement the known signaling pathways that rely on volatile, electrical, or phloem-borne signals. We suggest that vibration may represent a new long distance signaling mechanism in plant–insect interactions that contributes to systemic induction of chemical defenses.
植物の生育は音による影響を受けうる。しかし、その生態学的な意義はわかっていない。
著者らは昆虫の咀嚼により生じる音響エネルギーが植物に感知されるか調べ、咀嚼による振動が植物の化学的防御応答を誘導することを報告した。
モンシロチョウの幼虫の加害前に、あらかじめ芋虫の咀嚼による振動を受けたシロイヌナズナは、なにもしない時に比べ高いレベルでグルコシノレート(辛味成分、アブラナ科植物では防御応答に重要な二次代謝産物)とアントシアニン(ポリフェノール化合物、多くの植物で防御応答や酸化ストレス応答に必要な二次代謝産物)を蓄積した。
植物はまた、咀嚼による振動と風、または虫のvibrational mating song(虫の音、求愛の歌)による振動を処理した際、植物が咀嚼音に応答していることを確かめた。
植物はこのように捕食者の生み出す振動に応答し、従ってそこには選択制や生態的な意味がある。
振動シグナル経路は既知の揮発物質や電気、師管骨格シグナルに依存するシグナル経路に相補するものだろう。
著者らはこの振動が植物−昆虫相互作用において、化学的防御応答の誘導に貢献する新たな長距離シグナル機構として提唱されうると提案した。

こちらがこの論文の概要になります。

いや、幼虫の咀嚼音で防御応答が誘導されるって本当かよ?
どんな実験してるんだ?と思ったらこれ。

Figure 1. 振動再現のための装置。A. 振動再現のセットアップ。緑の右上にpiezoelectric actuatorと右下にいじったスピーカー。 スピーカーとアクチュエーターはダボでつなぎワックスを先に塗った。

どうやら写真の右上を見ると木の棒と葉がくっついています。

これで振動を伝えているんですね。

個人的には2時間も振動を与えたらストレスになるのでは…?とは思うんですが、Leafhopperというヨコバイの仲間の求愛音では防御応答が誘導されなかったようです。

面白い結果ですね!

おわりに

今回は幼虫の咀嚼音により植物の防御応答が誘導されるという面白い論文でした!

個人的には2時間も振動を与えれば誘導されるのではとは思うんですが、それでも2時間風を当て続けもしくはヨコバイの求愛音を聞かせ続けて誘導されなかったのであれば、納得せざるを得ません。

ただ、仮に幼虫に一部の葉が食べられた場合、即座にカルシウムイオンを使ったシグナリングシステムにより全身にシグナルが伝わります。

幼虫が植物の葉を咀嚼すると一瞬のうちにシグナルが広がっていくのが見えます。

そのため、自然界では咀嚼音によるシグナルより、実際の咀嚼による物理的な影響によりシグナル伝達がされているんだろうとは思われます。

ただ、咀嚼音によっても防御応答が誘導されるというのは面白いなと思います。
こんなところに目を付けるんだなあと。

今回使われた咀嚼音はこちらから聞けるのでぜひ聞いてみてください!

それでは!

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