こんにちは。
本日、衝撃的なニュースが出ました。
中国で「ゲノム編集女児」誕生か 大学側は「倫理違反」
そう、ゲノム編集が施された子供が産まれたのです。
ゲノム編集とは??
そもそもゲノム編集とは、生物が持つゲノムというを
そもそもゲノムはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の物質(塩基)がランダムに並んだもので、遺伝子などの遺伝情報が入った生命設計図です。
その4種類の塩基が3つ1組でとある順番になると、タンパク質の元になるアミノ酸を作るための設計図となり、その3組が連続することでタンパク質が作られます。
ゲノム編集はCRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)というシステムにより、その生命設計図の特定の配列を切断する技術です。
詳しい説明はこちら
この技術により、自由に(厳密には特定の配列がないと切断できないのですが)ゲノムを編集することができるようになるため、作りたい形質を持った生き物(例えば、辛くない苦くない野菜とか)を作ることができます。
今回の中国の例
今回の中国の例では、HIV(エイズウイルス)に感染した父親と非感染の母親から産まれた受精卵にゲノム編集を行いました。
エイズウイルスはヒトの免疫細胞であるリンパ球の表面にあるCCR5というタンパク質に結合し、感染します。このCCR5への結合を阻害する薬が治療として用いられています(HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班)。
→この内容は先日、ノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶さんの研究内容にも似ていますね。(2018年ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶さんの研究と叫ばれる基礎研究の場の減少)
今回は、ゲノム編集により、CCR5を無くした子供が産まれたようです。
しかも、術後の試験により、今回のゲノム編集が正確に行われ、他の遺伝子を編集していないか確かめたそうです。
ですが、CCR5を無くしたマウスでは、ウエストナイル熱に感染しやすくなるという報告もあり、他の病気に対しても感染しやすくなる可能性は否定できません(CCR5 deficiency increases risk of symptomatic West Nile virus infection)。
さらに、インフルエンザウイルスなどのウイルスの感染に対し、CCR5が必要という報告もあり、今回の編集が悪影響を及ぼす可能性もあります(The Chemokine Receptor CCR5 Plays a Key Role in the Early Memory CD8+ T Cell Response to Respiratory Virus Infections)。
今回の手術を行った人物による説明動画はこちらです。
研究者の意見を簡単にまとめると
・エイズ患者に子供を育てる機会を与えるという夢を与えた
・体外受精の研究が発表されたときもめちゃくちゃ非難されたが今では使われている
・将来的に使われる技術である
と正当化していますが、いや、今回のエイズ患者は治療薬使えばよかったでしょう…
ゲノム編集技術は生まれながらの病気を治療することができるかもしれない夢のような技術です。
ですが、生物が持つ遺伝子の機能の全てはわかっていません。
さらには、機能がわかっている遺伝子も様々な遺伝子と作用しあっていることがわかっており、その遺伝子が持つ生体への影響は計り知れません。
そのため、今回のニュースのように安易にゲノム編集を行うことは、将来にどのような影響を及ぼすか誰もわからないのです。
さらには、デザイナーベイビーが懸念されるように、人々が簡単に望む子供を作るようになる可能性が懸念されており、そのような倫理的側面からもゲノム編集のヒトへの応用には踏み切れていません。
終わりに
ただ、今回の対象になった人はエイズウイルスに感染した人でした。
どんなに子供がほしくても、子供にエイズを移してしまうかもしれない。
治療薬は高額で手が出せないという背景があったかもしれない。
藁にもすがる思いで、ゲノム編集に踏み切ったのかもしれません。
ですが、現在はエイズに対する治療薬はありますし、適切な治療をすれば、エイズウイルスを保有していても、子供に移さず出産することは可能なようです(AIDS/HIV総合治療センター)。
なので、安易にゲノム編集に踏み切らず(日本じゃやってないですが)、治療してほしかったですね。
もしかしたら、研究者もこの技術をヒトに応用したいという闇の心があったのかもしれないですし、倫理観を持たずして研究はしてはいけないなと思います。
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