学振の申請書で味わった博士後期課程の醍醐味。研究テーマ設定の難しさと面白さ。

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こんばんは。

先日、学振の申請書を出しました。

今回、学振の申請にあたり、研究テーマが変更になりました。

なので、研究テーマの設定から内容まで新しく計画したのですが、その苦労が今後、企業や研究所に行って新しく研究を始めるときにも役に立つだろうなと思ったので、今回は内容に関してはところどころぼかしながらまとめたいと思います。

申請書を書くにあたってはこういったブログ記事も書いたりしましたので、ぜひ読んでみてください。

業績がないから学振を諦めている人たちへ。無駄な研究など無いように無駄な研究計画書はない!

テーマがこれまでと変わった

今回博士後期課程に進学するにあたり、テーマが変わりました。

その過程に関しては諸々の都合により、ここには書きません(書けません)が今回の申請内容でいこうと決まったのは提出の約3週間前。

僕が今回与えられたテーマは植物と微生物の共生・寄生・殺生などの相互作用の中のある現象について明らかにする事です。

そこで、新しいテーマについて考える上での懸念は主に3つ

  1. 対象の植物と微生物を触ったことがないため、それらの扱い方が分からない
  2. テーマとなった現象を直接見たことがない
  3. その二つの関係性における現象の歴史が分からない

1の対象の植物と微生物を触ったことがないため、それらの扱い方が分からないに関しては、やはり扱ったことがないため、学振の申請書を書くにあたり、これまでの研究とこれからの研究を繋げるのに一苦労しました。

また、実際にどのように扱えば良いのか、何か特別に配慮するべき点があるのか、知らないことばかりです。

それと2のテーマとなった現象を直接見たことがないという問題があり、頭の中でふわふわとした感じで明確な現象のイメージが捉えきれず、申請書を作成する上で苦労しました。

また、3のその二つの関係性における現象の歴史が分からないは深刻で、これまで扱ったことがないということは、その研究を知らないということになります。

そのため、基礎的なところから勉強する必要があります。
ですが、3週間しかないのでもう必死で論文を読みました。

でも、これって他の会社とか研究所に行ったらやると思うんですよね。

ボス「そこの理系男子くん。来週までにこのテーマについて新しい研究を考えてよ。」
僕「はい!わかりました!」
みたいな感じです。想像ですけど。笑

そんな感じで初めてのテーマで学振の申請書を書き始めました。

調べるほど面白さが分かる

調べてみると、僕が研究しようとしている現象は1960年代に提唱されたようです。

その後、1980年代頃から放射性同位体や免疫金標識、分析機器によって、現象の解明や関与する化合物の推定が行われてきました。

その中で重要因子と思われる物質Aが推定されましたが、その現象は2000年代以降、報告がほとんどありません。

なぜでしょうか。

僕が考えた理由は2つです。

  1. 重要因子の発見によりメカニズムが想定されてしまい、興味が失われた
  2. その現象を解き明かすよりも重要なことがあり、優先順位が低くなった

1の重要因子の発見によりメカニズムが想定されてしまい、興味が失われたですが、これにより対象としている現象の理解が大きく進んだことは確かです。

この重要因子の発見を通じ、異なる植物と菌による関係性においてもその物質Aは発見されるのか、研究が行われました。

その結果、異なる植物と菌による関係性でもその物質Aが発見され、対象にしている現象ではその物質Aが重要であると結論付けられています。

しかし、その物質Aはいつ、どこで、どのように作られ、その現象に関与するのかわかりません。
また、その物質Aだけでその現象が説明できるほど、植物と菌の関係性は単純なものなのでしょうか。

それはやってみないとわかりません。
もしかしたら、そうなのかもしれないし、違うかもしれないです。

また、2のその現象を解き明かすよりも重要なことがあり、優先順位が低くなったに関しては、僕が対象としているのは農作物であるため、微生物関連では生産に直結する内容が重視される印象を受けます。

そのため、単純に農作物生産に直接寄与しない、またはする可能性が低いように見える現象は研究が後回しになってしまうでしょう。

その結果、分子遺伝学や解析技術が発展してなお、対象にしている現象は研究がされてないのではないかと思いました。
実際のところ、どうなのかはわかりませんが、博士課程のテーマとして研究できるのでラッキーです。

そうやって、過去に解き明かされたかもしれない現象を今の技術で解析することで、漠然と結果のみが分かっていたのが、その現象の形成過程まで解明でき、さらに植物と微生物の関係における普遍性などが見つけられたらと思っています。

曖昧な表現に逃げない

申請書を書く中で、複数の人に言われたことがあります。

それが、「曖昧な表現が多く、ふわっとした印象を受ける」ということです。

例えば、「関係性」「相互作用」「親和性」「適応性」「有用性」と言った言葉の使用です。

これらの言葉は一つだけで広い意味をカバーすることができ、これらを使うだけである程度雰囲気を掴めます。


・イネの生育を向上させる微生物○○の異なる土壌環境における有用性を研究する。
・○○遺伝子の機能解析によりトマトと○○病原菌間相互作用を理解する。

例文だと言っている事は分かって、あ〜そういう研究するのね。という印象は受けます。
ですが、その中身まではわかりません。

キャッチーではありますが、研究内容までは説明してないんですね。

例えば、このように修正してみてはどうでしょうか。

・イネの生育を向上させる微生物○○の異なる土壌環境における有用性を研究する。
→イネの生育を向上させる微生物○○の土壌肥沃度の異なる環境における定着率及び生育促進効果を検討する。
有用性という言葉を定着率、生育促進効果という言葉に置き換えました。
さらに、土壌肥沃度の異なる環境とより詳細に説明しました。
すると前より内容がつかめるのではないでしょうか。

・○○遺伝子の機能解析によりトマトと○○病原菌間相互作用を理解する。
→○○病原菌の○○遺伝子欠損株を用い、トマトへの感染時における○○遺伝子の機能解明及び病原性への関与を明らかにする。
機能解析という言葉を具体的に欠損株を用いること、感染時に注目していることを明記しました。
さらに、相互作用を病原性への関与に変えました。
これにより、前よりも具体的に何をするのか説明できているような気がします。

僕もまだまだ未熟なので、もっとうまくできるかもしれませんが、一文で説明しようとするとこんな感じになります。

個人的に今回の大きな収穫は、この曖昧な表現に逃げず、テーマを説明する文章を作れるようになることです。

学振の申請書を書いてみて

今回は僕の学振のテーマに関しての話でした。

昨年度に比べ、成長した事は研究計画を具体的かつ何が目的で行うか書けるようになったこと。
また、可能な限り曖昧な表現に逃げず説明するようになったことです。

実際に申請書が通るかはわかりませんが、それらの収穫が得られたのは良かったなと思いました。

これから、また博士後期課程を頑張っていきます!

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