僕の就活体験をもとに書いている博士学生の就活シリーズで、初回は心や行動を就活モードにしようという話、2回目は就活の軸の決め方と研究職以外の研究に携わる仕事について話をしました。
今回はエントリーシート(ES)の志望動機の書き方についてです。
ESって書くのは大変ですよね。あんなに大変な思いをして書いたのに落ちてしまった…という経験があると思います。
僕もそんな経験を就活1年目にたくさんしました。
僕の実際の就活経験はこちらです。
1年目
本選考ES20社以上(院卒向け研究職メイン)→ES通過5社→最終面接1社のみ。そこも不採用。
2年目
本選考ES11社(総合職メイン)→ES通過8社→最終面接2社。2社から内定。(内定承諾したため、途中で選考を辞退した会社もあり)
応募した数や職種は違いますが、1年目の通過率は約20%、2年目は75%以上と差は歴然でした。
今回は、志望動機の内容をどのように改善したのか。また、就活の軸を踏まえて業種の違う会社に対し、どのように志望動機を作成したのか。内容をぼかしつつ、実例を紹介します。
n=1の経験談ではありますが、参考になればと思います。
*注 あくまで僕の経験に基づいた話であり、実際の採用担当者の考えや採用基準などと異なる可能性があります。
今回伝えたいこと
・起承転結を意識し、顔が見えるESを書く
・使い回しの効かない、その会社のための志望動機にする
・他の人(できれば社会人)に絶対読んでもらう
その会社である理由と顔が見える志望動機を書く
前回、「これからの人生を好奇心を持って歩むために、日本の科学を支える」という軸を定め、科学に携わる仕事に就くことを目標にしたという話をしました。
実際に、研究開発法人、試薬会社、専門商社のそれぞれに提出して通過したESから、就活の軸と志望動機をどのようにマッチさせたか紹介します。
通過したESの志望動機を見ると、起承転結があり、僕の人物像や思いが見えるような内容になっています。
人物像が見えるような内容のことを顔が見えると呼んでいます。
下の例を見てみましょう。
これは同じ某研究開発法人にESを出して、お祈りされた1年目の志望動機と通過した2年目の志望動機です。それぞれ400文字以内です。
まず1年目を見てみましょう。
1年目(一部加筆修正してます)
研究者を支える仕事がしたいという思いと、魅力的なコンテンツ作りに携わりたいからです。そのため、私は主に広報と研究開発支援に取り組みたいです。その中で広報の一環として、研究員の○○が作りたいです。貴機構では○○や○○など、様々なコンテンツを展開しており、他の国立研究開発法人よりも充実しています。アウトリーチの拡大により、今よりも研究支援への理解につながり、科学が国民に還元するだけでなく、国民と共に科学を作り上げていくことができるようになると思います。それにより、国民が日本の科学に誇りを持ち、社会をリードする研究を日本全体で作りたいです。
では、何がいけなかったのでしょうか。自分なりに考えてみました。
1年目(一部加筆修正してます)
研究者を支える仕事がしたいという思いと、魅力的なコンテンツ作りに携わりたいです。そのため、私は主に広報と研究開発支援に取り組みたいです。その中で広報の一環として、研究の○○が作りたいです。→動機が長い
貴機構では○○や○○など、様々なコンテンツを展開しており、他の国立研究開発法人よりも充実しています。→この機構でないといけない理由は触れている。しかし、この一行だけ。
アウトリーチの拡大により、今よりも研究支援への理解につながり、科学が国民に還元するだけでなく、国民と共に科学を作り上げていくことができるようになると思います。それにより、国民が日本の科学に誇りを持ち、社会をリードする研究を日本全体で作りたいです。→これだけ使ったのに、ただの感想に近い。
「1.動機→2.志望理由→3.展望」という流れになっています。
まず、動機の部分が長く頭でっかちなため、その動機を持っている理由を理解するために時間がかかります。
次に、その会社である理由はコンテンツの話で触れているものの、一行しか触れていないため動機の部分とのつながりが弱く、その会社に対する強い思い入れや動機とのつながりが見えません。
そして、展望の部分で自分の科学への考えを述べているので、結局その機構で何をやりたいのか、ぼやけている印象を受けます。
では、2年目に出した志望動機(400文字以内)はどうでしょうか。
2年目(一部加筆修正してます)
私は科学や技術を人に伝え、還元する仕事に就きたいと思い、志望しました。なぜなら、私は研究活動に励む中で、二つの問題を感じたからです。一つは~~による○○という問題、もう一つは~~による○○という問題です(それぞれについて述べる)。その中で、貴機構は研究開発法人として研究支援と並行して○○など、国民への研究の浸透にも励んでおられます。私は○○や○○など、科学の国民への浸透に取り組む貴機構の仕事に魅力を感じました。そして、これらの取り組みが~~となって二つの問題の解決につながり、日本の科学の発展に貢献できると思い、志望しました。
コメントを入れると、以下のようになります。
2年目(一部加筆修正してます)
私は科学や技術を人に伝え、還元する仕事に就きたいと思い、志望しました。→動機
なぜなら、私は研究活動に励む中で、二つの問題を感じたからです。一つは~~による○○という問題、もう一つは~~による○○という問題です(それぞれについて述べる)。→自分事として捉えた理由や問題意識
その中で、貴機構は研究開発法人として研究支援と並行して○○など、国民への研究の浸透にも励んでおられます。私は○○や○○など、科学の国民への浸透に取り組む貴機構の仕事に魅力を感じました。→この機構である理由を詳しく述べる
そして、これらの取り組みが~~となって二つの問題の解決につながり、日本の科学の発展に貢献できると思い、志望しました。→最後の一文で志望動機全体を締める
「1. 動機→2. 実体験や問題意識→3. その会社である理由→4. 締め」という流れになっています。
1年目に比べて、動機は一行に簡潔にまとめています。
その代わり、動機の理由や問題意識の部分を具体的に書いています。その会社である理由は取り組みについて触れ、特に何に興味を持ったのか書いています。
そして、最後の一文で、自身の動機と研究開発法人の関係を締めています。
1年目と比べて、「2. 実体験や問題意識」と「3. その会社である理由」をしっかり書いたことで、起承転結の流れができており、機構に対する強い動機が見えると思います。
就活の軸である「日本の科学を支えること」との関連ですが、この機構では広報活動が盛んに行われているようなので、広報活動は国民の科学への理解を深めることにつながるという説明ができます。
通過した志望動機の別の例
こちらは試薬会社に提出したESの志望動機(250文字以内)です。
(一部加筆修正してます)
私は研究者を支える仕事に就き、これまで研究で培った知識や経験を活かしたいと思っています。在学中に貴社の試薬を使用する機会が多くありましたが、貴社を志望した理由は説明会でお話しした社員の方々に共通して、○○と語る姿が魅力的だったからです。特に○○部の○○様がおっしゃった「○○」という言葉が心に残りました。○○部での○○という業務は難しいと思いますが、○○部で働きたいと思いました。
この志望動機にコメントを付けていきます。
(一部加筆修正してます)
私は研究者を支える仕事に就き、これまで研究で培った知識や経験を活かしたいと思っています。→動機
在学中に貴社の試薬を使用する機会が多くありましたが、貴社を志望した理由は説明会でお話しした社員の方々に共通して、○○と語る姿が魅力的だったからです。→この会社である理由。今回は説明会に複数参加して、社員の共通認識を深めたことをアピールした
特に○○部の○○様がおっしゃった「○○」という言葉が心に残りました。○○部での○○という業務は難しいと思いますが、○○部で働きたいと思いました。→さらに、興味がある部署の人のエピソードを書き、取り組みたいことを述べて締める
志望動機に自分の内的な動機を書きたかったですが、試薬会社にお世話になっている人はたくさんおり、それを書いても埋もれてしまうと思ったので、御社に入りたいのでちゃんと行動してますよ。というアピールをしました。
「1. 動機→2. 企業に関わる実体験→3. やりたいこと+締め」という流れですが、こちらも動機は簡潔に書き、その会社である理由とやりたいことを具体的に書き、最後の一文で締めています。
就活の軸との関連ですが、この会社は試薬を提供しているため、研究者の活動を直接支えられるという説明ができます。
こちらは専門商社の志望動機(300文字以内)です。
(一部加筆修正してます)
御社では実験器具を自社開発しており、研究者のニーズに沿った製品を作れると思ったからです。実験では、○○ひとつとっても「○○のしやすさ」「○○の見やすさ」「○○」など、各社の特徴があります。実験においては、研究者のこだわりが顕著に現れるため、それが実験効率にも影響します。さらには、~~や~~など、実験器具には改善の余地がまだまだあると確信しており、そこにビジネスチャンスがあると思っています。私はこうした経験から、○○に取り組みたいと思っています。
この志望動機にコメントを付けていきます。
(一部加筆修正してます)
御社は実験器具を自社開発をしており、研究者のニーズに沿った製品を作れると思ったからです。→動機
実験では、○○ひとつとっても「○○のしやすさ」「○○の見やすさ」「○○」など、各社の特徴があります。実験においては、研究者のこだわりが顕著に現れるため、それが実験効率にも影響します。→自分の着眼点を述べ、自分事であることを伝える
さらには、~~や~~など、実験器具には改善の余地がまだまだあると確信しており、そこにビジネスチャンスがあると思っています。→着眼点から、自分の意見を述べる
私はこうした経験から、○○に取り組みたいと思っています。→最後の一文で志望動機全体を締める
こちらは実体験をもとに自分の考えを述べ、やりたいことを述べました。
「1. 動機→2. 実体験や問題意識→3. やりたいこと→4. 締め」という流れですが、こちらも動機を簡潔に書いた後、実体験から自分のやりたいこと、その会社で挑戦したいことを具体的に書き、最後の一文で締めています。
就活の軸との関連ですが、こちらの会社では実験器具類の提供だけでなく、研究者の意見からニーズに沿った製品の開発をしており、研究の発展により貢献できるという説明ができます。
3つの志望動機の相違点
まず、どの会社の志望動機でも就活の軸を満たすことを意識して書きました。
そうすることで、異なる業種の会社に応募していても根っこの思いは共通しているので、自分の持っている熱量をブレずに伝えられたと思います。
次に、「起承転結を作り、一つのストーリーとして成り立つ」ことを意識しました。
今回、3つの志望動機の例では、それぞれ文字数や内容が違うものを出しましたが、大筋は共通しています。
①「1. 動機→2. 実体験や問題意識→3. その会社である理由→4. 締め」
②「1. 動機→2. 企業に関わる実体験→3. やりたいこと+締め」
③「1. 動機→2. 企業に関わる実体験や問題意識→3. やりたいこと→4. 締め」
「1. 動機」に対して、その根拠となる「2. 実体験や問題意識」が弱かったり方向性がずれていると、「3.その会社である理由、やりたいこと」に結びつきにくくなります。
今回の3つの志望動機の「2. 実体験や問題意識」では、自分が感じたことや経験を書いていますが、
「当事者意識を持っていること」や「実際の体験から考えたこと」を書くと、内容がとても具体的になる他、「3.その会社である理由、やりたいこと」を述べる時に、この思いがあるからこの会社なのね。と論理が通りやすくなります。
この流れを意識して、実体験とやりたいことの文字数を調節しながら、志望動機を作りました。
また、作った志望動機は必ず他の人(できれば社会人)に読んでもらい、自分では気づかないポイントを指摘してもらいました。
終わりに
今回、3つの例を出しましたが、どれもその会社のために作成したものでした。
同じ業界の企業を志望する場合、「動機、実体験」は共通しても問題ないと思います。
ですが、その次の「やりたいこと」はその企業に合わせて書きましょう。そうすれば、「締め」も変わってくると思います。
人事の人は使いまわせるESを書いていると、それを見抜いていると思います。(体感として、その企業のため感が薄いESは落とされました)
「やりたいこと」を企業に合わせるということは、その企業のことや同業他社をしっかり調べるということです。やりたいことが企業とマッチしていなければ、その企業で活躍できる可能性が減り、採用される可能性も低くなってしまうでしょう。
就活の軸がしっかりしていて目的があれば、企業でやりたいことは手段化するので、その企業に合わせること自体は就活の軸からブレるわけではありません。
なので、100%マッチするところなんてないと割り切りつつ、それぞれの会社の強みを理解した上で志望動機を書ければ、ESが通過する可能性が上がると思います。
今回伝えたいこと
・起承転結を意識し、顔が見えるESを書く
・使い回しの効かない、その会社のための志望動機にする
・他の人(できれば社会人)に絶対読んでもらう
初回と2回目の記事はこちらです↓
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